青梅煮を拵えてみたい・・・
ふたつの偶然が重なった結果、未知の食材 “青梅” に挑んでみたくなったのは去年の今頃のこと。
ひとつは主人と出掛けた京都の御料理はやしさんにて。
ご主人が拵えた青梅煮の見事なまでの翡翠色、そしてその味に感動してのこと ⇒ ☆
そしてもうひとつは、ネイリストのFさまから1年前に思いがず届いたメールがそれ。
実家で青梅をたくさん収穫して参りましたのでいかがですか?と。
生憎、はやしさんの青梅煮に感動したのは、Fさまからのメールを頂くほんの数日前のこと。
当時は青梅=梅干し・梅酒程度の知識しか持ち合わせておらず、せっかくの青梅は辞退致しました。
その後はやしさんの青梅煮に出会い、もし来年青梅を頂けるのであれば是非・・・
昨年ネイルケアをして頂きながら話したこと、嬉しいことにFさまは憶えていて下さったようです。
青梅の季節到来、ご実家の梅の木に実った青梅を袋にいっぱい届けて下さいましたよ。
立派な梅ばかりを苦労して選りすぐって下さったのでしょう、美しくてふっくらした梅の実ばかり。
さっそく念願の青梅煮に挑んでみましたよ。
はやしさんのような翡翠色した青梅煮には適うはずもありませんが、初めての青梅煮。
ご苦労して収穫された上に自宅まで届けて下さったFさまに感謝しながら、丁寧に仕上げました。
時間がなくて白ザラメが手に入らなかったり、思うお鍋を保持していなかったりと改善点は多々。
もし願いが叶うのであれば、年末の黒豆と同じくFさまの青梅で拵える青梅煮を年中行事にしたい・・・
そしていつかは、黒豆と青梅煮と言えばあの人だよね・・・そんな風に言われるお婆さんになりたい。
ささやかな課題です。
まるでビロードのようなFさまの青梅。
あまりの美しさに、まずは写真から。
情報が飛び交う昨今、ひとつのレシピに的を絞るのにもひと苦労致します。
散々悩んだ結果、 “いのちのスープ” で知られる辰巳芳子さんの煮梅に落ち着きました。
先ずは青梅を丸3日間塩水に浸し、その後細い流水で丸1日水に晒してから仕上げるといった工程。
彼女のお料理殆どに共通されるよう、時間はかかりますがそれほど手間ではありません。
梅雨の季節、ゆっくり青梅と向き合うのも楽しいものです。
備忘録として分かりやすく、それぞれの工程に分けて記して参ります。
作りやすい分量として、青梅は1キロ使用致しております。
■あく抜き
- 先ずは塩水の用意を致します。
水 700t・お塩 70gをひと煮立ちさせてお塩を溶かし、ぬるく冷まして塩分に強い蓋つき容器に移します。
- 塩水を冷ましている間に、青梅 (1キロ) の準備をしましょう。
青梅を綺麗に洗ってひとつひとつしっかり丁寧に水気を拭き取ります。
竹串を使い、実を傷つけないよう気をつけながら、なり口の黒い部分を取り除きましょう。
- 先を細く削った竹串を使い、青梅ひとつにつき6〜7箇所を突きます。
この時、金串ではなく竹串を使うことが辰巳さんの信条だそうです。
突いた梅から順に1の塩水に放し、陶器のお皿で落し蓋をして丸っと3日間漬け込みます。
この時、綺麗な青色だった梅が日を追うごとにどんどん黄色く変色して参ります。
蜜を含ませる段階で、お鍋を琺瑯か銅にすれば鮮やかな青色にまた変化するとかしないとか・・・
我が家にはどちらのお鍋もありませんので、ここはあくまでも仮説です。
■塩抜き
- 3日間塩漬けにし、鮮やかな青色がすっかり抜けてしまった青梅たち。
今度は丸1日かけて塩抜きをします。
蛇口に晒布を巻き、その先端が梅の底につくような状態で細く細く水を出します。
流水によって出来る対流で、青梅の塩気とアクを抜くという理屈だそうです。 水道代が勿体無いなどとは思いません。1年にいちどのことですもの、そして趣味ですもの。
ベーコン作りを趣味としております知人。
対流で塩気を抜く・・・ベーコン作りにも応用できると、この工程にいたく感動しておりました。
■下茹で
- 塩抜きの終わった梅・たっぷりのお水を中火にかけ、静かに下茹でします。
この時、梅の中心までやわらかくなる程に茹でてはいけません。
沸騰間近になって水の温度が上昇してくると、梅がぷかんと浮いてきます。
そこから弱火にし、3〜5分茹でたら火を止めます。
そのままお鍋を蛇口の下に持っていき、塩抜きの時と同様蛇口に晒布を巻いて流水に晒しながらひと晩おきます。ひと晩お水に晒した後、塩の加減をみて最後の工程に移りましょう。
■煮る
- 蜜の準備を致しましょう。
水 600ccに白ざらめ 800g〜1kを煮溶かし、冷ましておきましょう。
今回は生憎白ざらめが手に入りませんでしたので、不本意ではありますが上白糖で。
- 下処理の完了した梅をそっと水から引き上げ、晒布でそっと水気を拭き取りながら、もし破れた梅があれば取り除きます。幸い今回はゼロ、皆綺麗でした。
辰巳さん曰く、この時も使うなら金属製のザルでなく竹製が望ましい、と。
- 冷ましておいた蜜の中に梅をそっと移します。この時手を使うのがお勧めだそう。
弱めの中火でゆっくり煮立つ直前まで火を入れ、キッチンペーパーで落し蓋をします。
蜜のなかでゆらゆらと温める感じを保ちながら、静かに決してぐらぐら沸騰させないよう20分ほど煮ます。時々お玉で蜜を上から回しかけてあげます。
20分ほど煮たらそのまま冷まし、消毒したビンに梅だけをそっと移しましょう。
- 梅を取り除いた蜜だけを火にかけ、2/3程度になるまで煮詰めます。
爪楊枝に印をつけて、これを目安にすると便利ですよ。
煮詰まったらこれを完全に冷まし、梅を覆うようにビンに注ぎましょう。 冷蔵庫に移し、4〜5日おいて味がなじめば出来上がり。
長期保存をする場合は、糖度を上げれば可能だそうです。
その際は、蜜を煮詰める段階でお砂糖を追加すれば良いとのこと。
こうして1週間以上もかけ、じっくりじっくり蜜を含ませた青梅。
期待しておりましたような翡翠色に仕上げることは出来ませんでしたが、文字通り手塩にかけた青梅煮は理屈抜きで愛おしい。器量の少々のこと、ちっとも気になりません。
ただ、やはり人様に差し上げるつもりがあるのならば、器量も気にかけてあげねばなりません。
そんな私を見て、主人が言いました。
『今度夏に京都に行くとき、銅鍋買ってあげるよ。』
夏?京都?
彼のことですもの、きっと御料理はやしさんもホテルも予約済みですわね。準備万端ですわね。
翡翠色に仕上がる青梅煮、林さん直々にご伝授いただこう。
そしてよく考えた上で・・・そうね、銅鍋もそろそろ持って良い年頃かもしれませんわね。
考えておこう。
Fさまの青梅のおかげで、梅雨の時期の楽しみがまたひとつ増えました。