秋の単衣に袖を通したい、その為だけにお邪魔した2024年の京都俵屋旅館。
早めにお家を出たのは、高速に乗る前に村瀬シェフのお店に寄ってお喋りとランチを楽しむため ☆彡
穏やかなおふたりと懐かしいシェフの食事に満たされ、心地よく京都に向かいます。
そしていつものように3時を少し回った頃合いで俵屋旅館に到着。
予約をした『東雲(しののめ)の間』に落ち着きます。
本館の木製の階段を上ったお二階、こじんまりとした東雲の間。
一段高い小上がりに設けられた掘りごたつ、おそらく冬にはここで暖をとりながらお庭を楽しめるのでしょう。
小雪がちらちらなんてしていたら、もう最高でしょうね。
床の間にはお月さま。
俵屋さんにお邪魔する際は、私がいつもいちばん風呂。
お部屋に比べれば幾分か広めなお風呂、ひと息ついたらゆっくりと湯船に浸かるとしましょう。
そして主人が上がるのを待って一緒にビール。
そんなことを想っていたら、わらび餅が運ばれてきましたよ。
あれ?お皿が変わりました?
それともいつもこんな感じでした?
椿の花にも見えます。
いつもの朱色の座卓でお茶をいただきながら、どうしても小上がりスペースが気になる様子の主人。
夕食はあちらでいただこうよ、と。
もちろんです、とのご快諾にお風呂上がりのビールも進みます。
でもね、小瓶に追加の大瓶は少々過ぎますよ、主人。
掘りごたつから眺める俵屋さんの瓦。
この真下には坪庭、今は重陽のお節句に伴う菊の被綿(きせわた)の誂えです。
なつさんの軽やかなお声と共に夕食が始まりました。
いつも気になっておりました食前酒の平杯、黒川さんの手描きなのだそう。
毎回絵柄が異なるのですが、今回は陶淵明(とうえんめい)の菊。
・・・あれ?蓮だったかな?
まぁ良いや、菊酒で夕餉の始まりです。
鱚の信楽揚げに立派な銀杏のあられ揚げ。
程よいお塩加減のススキ素麺。
小芋の脇に添えられた茄子に主人は感激しきり。
小芋の脇に添えられた茄子に主人は感激しきり。
私の拵える揚げびたしと比べる方がどうかしています。
鯵の竜飛巻き、お酢の効かせかたがまろやかで本当に美味しい。
小吸物は鱧でした。
鯛のへぎ造りに鰹の炙り、そして海老。
海老に感動することって、そうそうないと思うのです。
椀にはスズムシ。
穴子の茶巾豆腐。
イメージはお月さまだそうですよ。
イメージはお月さまだそうですよ。
お椀に張られた豆乳の滑らかさにうっとり。
相変わらず達筆過ぎで解読不能な黒川さんのお品書き。
焼き物は『魴鰹』の白焼き、これで『マナガツオ』なのですって。
肝を添えた鮑等々、錚錚たるお顔ぶれのなかで特に輝いていたのが地味な『蓮根の土佐煮』
いつもお家で食べている料理をプロが手掛けるとこうなる、のお見本のような蓮根でした。
たっぷりの餡をまとった冬瓜。
よい具合にお酒も進み、強肴となりました。
太刀魚の焼きびたし、針のような千切りの長芋と赤芋が添えられていました。
嬉しいことに新米だそうですよ。
最後はイチジクで。
お名残り惜しくはありますがお開きです。
主人が何度も繰り返しておりました。
このクオリティはもう味わえないだろう、と。
そして今日のお料理は個人店では提供できないだろう、と。
私は秋単衣でご満悦、主人はお料理でご満悦な2024年、秋単衣には暑すぎる京都、俵屋旅館でありました。
ほどよいかたさのお布団で就寝です。