結婚前も含めた主人との旅で嫌な思い出はひとつとて思い浮かばないのですが、今回の旅は今まで以上に有意義で、これから先のふたりの生活を更に良い方向へ誘ってくれるものであったと確信致しております。
先ずは今回の旅のきっかけとなりました女性とのお気に入りの一枚。

着物日傘アーティストの柴田さま。
奈良でお母さまの作品展があるとかでご案内を頂き、どうしてもご本人にお会いしたくて奈良へと向かいました。
彼女とのご縁を賜ったのはもちろん日傘。
今年の4月。
帯状疱疹で1週間の入院を余儀なくされた主人を病院に託し、ひとりで出掛けた京都俵屋さん楓の間⇒2019年04月08日 2019年04月09日
部屋から眺める青々した楓の先の小さな赤い花の花言葉は『美しい変化』『大切な思い出』
主人とふたり最初に宿泊した俵屋さん以来お世話になった中居さんの旅立ちに相応しいこの花言葉を想いながら、私がのこのこ向かった先は京都の老舗呉服屋のゑり善さんでした。
それだけの理由で誂えた楓模様のレース生地の塵除けが届いたのはその数ヶ月後。
添えられていた余り布が彼女の手に渡り、母の古い羽織をアクセントにした素晴らしい日傘が仕上がりました。

小さなトートバッグも彼女の作品。
裏地は母の羽織生地です。
ちなみに作家さんこそ異なりますが、手前は数年前に母とペアで作って頂いた数寄屋袋。
裏地は子供用の長襦袢を解いたツルっとした生地です。
祖母が生前、誰かの着物だか何かを解いて縫ってくれた子供用長襦袢が巡り巡って幼少の私の番となり妹の番も終え、最後は数寄屋袋の裏となったという慎ましやかなお話です。
さて。
よほどの機会がないとなかなか訪れることもない奈良。
実は、当初の予定では私ひとりで京都に行く心積もりでおりました。
日傘が出来上がった頃にふらりとひとりで俵屋さんへ行き、ゑり善さんで出来上がった日傘を自慢しよう。
はい、イヤらしい人間です、わたくし。
ですが奈良に行けば彼女に直接お礼申しあげられる、それならばと主人を誘い、高速を使って楽々奈良へ。
作品展の場所は奈良の観光スポットでもあります“ならまち格子の家”
・・・の前に、奈良と言えば三輪素麺。
お昼ご飯はもちろん三輪素麺。
創業300年の直売所も兼ねた三輪山本素麺のお食事処の隅席を陣取りました。

メニューは既に冬季限定の温かい素麺になっておりましたが、いえいえ、健在ですよ。
年中頂ける冷たいお素麺、極細素麺“白髪”が。
柿の葉寿司を主人とひとつずつ頂きながら、まるで絹糸のようなお素麺を頂きました。

この細さ、画像で伝わるかしら。
夕食にひびかない控えめな量でお腹の満たされ方も程よく、いよいよ目的地へと向かいます。

近くの無人パーキングに車を停めて“ならまち格子の家”へ。





お二階へ上がりいよいよ旅の目的、着物日傘アーティストの柴田さまとの初お目見えを果たします。
本当に魅力的な方でした。
画像を通しても楽しそうな雰囲気は伝わるものですが、実際にお会いした彼女は魅力に溢れておりました。
その後京都へと向かい、今回は俵屋さんではなく京都滞在時にしばしば利用するホテルへとチェックイン。
ささやかな三輪素麺のお昼はとうの昔に消化済み。
ホテルのバーで一杯だけと、ウォッカマティーニとドライマティーニを頂いてから向かった先は、1年半ぶりの御料理はやしさん。

最初にお邪魔したのは10年近くも前になるのかしら。
私は仏頂面のご主人に委縮し、主人は林さんの所謂“味を求めにいくお料理”に戸惑い、当時はまだまだ随分と背伸び致しておりました。
この日からです。
主人が自宅の調味料を全て吟味して買い替え、食材を活かす薄味に挑み、林さんのお料理を理解すべく生活改善一大プロジェクトに取り組んだのは。
そして今回の林さんのお料理を頂き、主人は決心したようです。
『僕、多分これが林さんにお邪魔する最後になると思う』
主人、林さんを卒業です。
マヨネーズが好きで、どろっとした照り焼き味が好きで、お肉が好きで、濃い味が好きで、ジャンクフード好きだった主人が林さんのお料理をきっかけに今に至っております。
林さんのお料理を食べていなければ、未だに手頃な外食にどっぷり浸っていたでしょう。
そして私の料理も全く進化していないでしょう。
趣向は加齢とともに変化するもの。
世間の流行りやその廃り、映えるお料理に流されず、ふたりでふたりに合った今後の食卓を無理なく楽しみながら作っていく所存でございます。
それを思うと、今回の旅のコスパは最強だったと実感致します。
着物日傘アーティストさんとの出会い、御料理はやしさんからの卒業、意義ある奈良・京都の一泊旅行の備忘録は明日も続くのです。
