満開の桜には少し早いこの時期。
お部屋の選択も多少は可能かと思いきや、空きがあるのは特別室の “鷹の間” のみとのこと。
これもご縁と、エイやっとお出掛けしましたよ、俵屋旅館 鷹の間の京都早春一泊旅行。
がっくり (いえ、むっつり・・・かしら) しておりました私の目に飛び込んだのが、この坪庭の源平桃。
三月も中旬とは言え、俵屋さんではまだまだ桃のお節句の誂えが楽しめます。
満開の源平桃の足元にはさり気なく有職貝合わせ。
お部屋に案内して頂く途中だというのに、忙しないことでお恥ずかしい限りです。
そんなこんなでお部屋に到着するまでのほんの極々短い道のりを有意義に使い、ようやく鷹の間に到着です。
俵屋さんの中ではいちばん大きなお部屋だそうです。
二部屋だった名残の “桐” の表札がまだ残されているのが俵屋さんらしくて気持ちが和みます。
鷹の名にぴったりな迫力のあるお庭。
この奥行、伝わるかしら。
実際、お風呂には2度ほど浸かりましたがシャワーブースには足を踏み入れませんでした。
お風呂の横には明るいちょっと洋風なこんなスペースも。
今回の京都旅行はおサルさんとご縁があるようです。
俵屋さんに行ったら、先ずはお風呂を頂かないとダメよ。
そう教えられた私は、その後もその教えをしっかりと守っております。
この日も一番風呂をちゃっかり頂き、例のおサルさんのお部屋でダラーっと寛いでおりましたところに一本の電話。
『今からお茶を点てますので是非いかがですか?
浴衣姿?えぇえぇ、構いませんとも、どうぞお気楽にいらして下さい、皆さま胡坐でお楽しみです』
欲張って一番風呂を頂いた結果。
主人はジャケット着用、私は浴衣のすっぴんという情けないお茶会が始まりました。
ですが物腰柔らかなお美しい亭主 (若女将とのお噂も) との気さくな会話にすっかり打ち解け、浴衣姿ということもあって随分と和んだお茶の席となりました。
ですがお優しい亭主のおかげで、お茶に興味深々の様子。
知人に頼んで習いに行くそうですよ。
・・・ということは私も、ですね。
(・・・少なくとも、私にはそう呼べと命じたのでそうなのでしょう)
そんな和やかなお茶を頂き、カラカラと下駄の音を鳴らして近所のバーに行けども設備のメンテナンスとかでやんわり断わられてスゴスゴと俵屋さんに戻り、書斎で時間をつぶし等しておりましたら夕食の時間です。
やはりお食事も桃の節句の佇まい。
貝合わせの器で早生ミカンのお酒を頂き、海老の雛寿司に目を細めます。
画像にはほんの端っこしか写っておりませんが、蓮根のすり流しに温まります。
河豚のお刺身を美味しいと思ったのはこれが初めてです。
子持ちのもろこを初めて頂きました。
これは美味しい、抜群に美味しい。
ちょっぴりの蕗味噌、春の味です。
何気に添えられたこの黒豆、主人が言います。
『僕、どぅみぃ (私のことです) が作った黒豆がいちばんだと思っていたけど、今2番に落ちたよ。』
この5粒の黒豆で私の自慢の黒豆は格下げと相成りました。
恐るべし、黒川板長。
お部屋係のさやさんに黒豆の秘訣を尋ねると、素直なさやさん、ちゃんと聞いてきてくれたようです。
『普通に煮れば良いのです、小豆を炊くように普通に』
・・・なんの参考にもなりません。
恐るべし、黒川修功。
機嫌を直して温物は鱒。
穴子の下にはホタルイカ、そして脇にはお多福豆。
そう、今回の俵屋さん一泊旅行は母も一緒。
主人はこの頃になっても黒川さんの黒豆をうっとりした口調で語っておりました。
俵屋さん鷹の間の夜も更けました。
後は寝るだけです。
ですが、食べた後にすぐ寝るのも味気ない。
京都へ向かう途中、ちょっと遠回りをして三重県の津に寄るのが私たちの恒例です。
恒例の東洋軒に母も連れ出したこの日のお昼、東洋軒でのランチを振り返りましょう。
あれこれ食べたい欲張りさんは母は、この日のランチ。
うっとりするほどやわらかなトンカツに母は大喜びでした。
俵屋さんの夕食を数時間後に控えたこの余裕の笑顔。
ショートボブがハッとするほどお似合いの感じの良い美人さんでした。
明日は京都の二日目を備忘録。