2019年04月03日

熱海 蓬莱別館 “ヴィラ・デル・ソル” の大千秋楽 〜 後編

嘉永二年、1849年から続いた熱海の名旅館蓬莱。
そしてその別館 VILLA DEL SOL(ヴィラ・デル・ソル)。

2012年からは星野リゾートに経営を任せつつ、先日4月1日で最後の宿泊客を見送りました。
平成から令和へと時代が変わる中、蓬莱とヴィラ・デル・ソル ふたつの歴史的お宿の大千秋楽に立ち会えた幸運を昨日に引き続き備忘録。





岐阜から新東名で約300キロ、鎌倉〜湘南〜とダイナミックな寄り道を経てようやく到着した熱海。
何かで知ったヴィラ・デル・ソルのハンカチに憧れ、そのメインレストランである南葵文庫にいつかお邪魔するのを夢見、そんな独身時代は今から20年近くも前のお話になるのですね。

主人が一気にその夢を叶えてくれ、新婚旅行で初めて宿泊したのがヴィラ・デル・ソルでした。
昨晩は変わらぬ金野シェフの懐かしい蛤のお料理を前に主人と思い出話・・・

という訳には参りません。
何と申しましても、今や星野グループが手掛ける蓬莱とヴィラ・デル・ソルですからね。
大千秋楽ともなるとイベント盛り沢山です。

ディナーを終えるとロビーに集合、バスで海辺へと移動します。
専用クルーズ船に乗り込み、海上から楽しむ平成最後の熱海大花火大会の始まりです。

綺麗です。
大迫力です。

・・・で、ですが兎に角強風、しかも風が冷たい、寒いにも程がある寒さ。










30分弱の打ち上げ時間とは言え、それはそれは豪華な花火大会でした。
クルーザーには数人の熱海芸妓さんもご乗船して華を添えます。
そしてまた皆でバスに乗り込み、次なるイベント熱海芸妓さんの宴の会場であります蓬莱へ。

出迎えて下さったのは蓬莱の女将、古谷青游さん。
熱海芸妓さんより星野社長より、ヴィラ・デル・ソルの河原日出子さん亡き今誰よりもお会いしたかった方です。





少々不躾なお願いにも快く応じて下さり、女将ご自身もそのほんの一瞬を楽しんでおられたかのように感じられました。
大千秋楽にあたり女将にお会い出来た。
ヴィラ・デル・ソルで宿泊した際は河原日出子さんにお会い出来、こうして大千秋楽を迎えた蓬莱では女将の古谷青游さん。
私はそれで十分幸せです。





もちろん至福のままという訳には参りません、何と申しましても大千秋楽の一大イベントですから。
大広間にワラワラと移動し、熱海と言えば梅、梅酒を楽しみながら熱海芸妓さんの宴が繰り広げられます。

甘酒のアイスクリームでクールダウンした後は、中庭で線香花火を楽しみました。

明日はもう灯されることがないのでしょうか、蓬莱の灯り。

早々とタクシーを呼んでヴィラ・デル・ソルへと戻ります。






ヴィラ・デル・ソルでも大千秋楽のイベントは続きます。
バーでは秘蔵のワインが振舞われました。

星野グループの秘蔵ワインはラング・ドックだそうです。

大千秋楽ということで、特別お風呂は深夜2時まで開いておりました。
が、普段9時に就寝する我々ですもの。
寝ましょう、もう寝ましょう。










普段4時に起床する私でも、この日だけは寝過ごしました。
はっと気づけばカーテンの外は白々、5時半、私にとっては大寝坊。
がバッと飛び起き、大千秋楽イベントのひとつ 日の出を鑑賞しようと青海テラスへと急ぎます。

朝の冷気、熱々の梅湯から湯気が立ち上ります。
我が家の白湯も梅湯にしようかしらん。






日の出を鑑賞するには最高のシチュエーションです。

早朝6時前、日の出の後はせっかくなので温泉へと向かいます。
昨晩は女湯だった青海テラス横の走り湯から更に上へと階段を上り、太平洋を見渡す露天風呂へ。

まだ日も上り切っていない早朝、贅沢な朝風呂です。











すっかり明るくなった頃、お風呂から上がってお部屋に戻ります。
これは女将の字体かしら・・・なんてのんびり山道をお散歩しながら。

道中、ヴィラ・デル・ソルが一望できます。

味わいある小路もなくなってしまうのかしら。











早朝の温泉を堪能した後は、もちろん朝食。
主婦にとって、旅の醍醐味って朝食だと思うのです。
ディナーは宿泊せずとも食べられますが、朝食は宿泊者のみの特権ですもの。
お風呂のお掃除も夕食の後片付けもせず、すっと朝食の支度がしてあるなんて。

新婚旅行の時はお部屋で頂いた朝食、今日は南葵文庫で。
お天気は快晴です。

オレンジジュースがこんなに絵になる南葵文庫。

決して華美な演出ではないのに絵になります。

小麦粉を使わない代わりに、しっかりと泡立てることでコクを出すサラサラのクラムチャウダー。
ミネストローネばりの具沢山です。

シンプルなスクランブルドエッグ、何故にこう美しいのかしら。

可愛らしいガラスの器にはヨーグルト。
底にはイチゴとルバーブのジャムが潜んでおります。
イチゴとルバーブ、そしてパッションフルーツの組み合わせ、これは真似したい。

食後に記念写真をとお願いしたら、テラスへと案内して下さいました。











朝食を終え、お部屋に戻ろうとしたらフロア係の方に呼び止められました。

蓬莱とヴィラ・デル・ソルの大千秋楽にあたり写真集を作成するとか。
一般に発行する予定はないが、写真は竹沢うるま氏、文は山口由美さんによる豪華な写真集。
昔のヴィラ・デル・ソルをご存じとのことで、インタビューをお願い出来ないでしょうか、と。

河原日出子さんのことをご存じでない若い方ばかりの星野リゾート。
星野さん、本当にこの素敵な洋館をあっさりリノベーションしてしまうのかしら。

エントランスドアのステンドグラス。

河原日出子さんもお座りだったデスク。

新婚旅行の時は緊張して通った門。
この文字を見た時は本当に感激しました。

当初は車で門をくぐらず、門の外にあるスペースに駐車したのよね。

ふふふ、我が家のカローラ君です。
トランクには畑作業用の泥だらけの長靴が無造作に放り込んでありますよ。
新婚旅行の時は主人のトゥインゴ君だったっけ、ゴールドのね、すぐ壊れるやつ。

ヴィラ・デル・ソルのロビーから晴天の太平洋、遠くには初島。

お名残惜しくはありますが、そろそろ本当にヴィラ・デル・ソルとお別れの時です。

蓬莱の女将とほんのちょっとですがお話が出来ました。
新婚旅行の時、遠くに女将を拝見した時はとてもとてもお声をかける勇気などありませんでした。

今回少々忙しくはありましたが、ディナーの時お隣に座っていらした素敵な老夫婦。
お互いにお互いを意識をしていたようで、こちらもご挨拶程度ではありましたがお話出来ました。
ちょうど写真集のインタビュー時でしたので、お帰りの際のご挨拶は出来ませんでしたが印象的なご夫婦でした。





最後の一枚はヴィラ・デル・ソルのエントランスで。
新婚旅行でももちろん撮って頂いた場所で、今回は金野シェフと。

あ、ごめん、主人。
この後、すぐに気づいてジャケットのボタンをしっかり留めたのに。
熱海の歴史的お宿、蓬莱とヴィラ・デル・ソルはこれで事実上の閉館です。










熱海からは沼津に向かい釜揚げしらすを調達。
その後三島に向かって昼食、大好きなウナギを完食します。
どんな時だってお腹は空きます、うん、これで良いのです。











帰宅後は沼津で買った黒はんぺんを肴に、日本酒片手の反省会。
蓬莱の建物の一部、松の古木を手作業で削り出して拵えたお箸をお土産に頂きました。
大事に使います。

そして箸の下にある黄色と白と黒の派手な色使いの冊子は、篠山紀信氏の写真集。
蓬莱の女将 古谷青游さんにおずおずと差し出したのはこの写真集でした。

何か一言頂きたい、そう思って持参したこの写真集。
女将に対して失礼ではないかしら、相当葛藤したのもこれ本当。

ですが女将はこれを見るなり目を細め、恥ずかしそうにでも嬉しそうに、そして懐かしそうにおっしゃいました。

『あらぁ、この方たちこんなものお持ちになって。
篠山紀信さんがいらっしゃった時にね、おぉあなた方面白いじゃないか、ここにちょっと立ちなさいなんてね、写真をお撮りになったのよ、私、写真は嫌いなのだけど』





女将のこのお言葉だけで私は胸もお腹もいっぱいです。
いまこうして思い出していてもじんわり、満開の桜をみるとじんわり、女将、素敵でした。





そして今、往復600キロの運転が応えたのでしょうか。
主人がヘルペスを発症して床に臥せっております。
可哀そうに、腫れた目が痛々しくて見ていられません。
早く回復して、そしてまた飲みながら二人のご婦人のお話をしましょ。
蓬莱とヴィラ・デル・ソル、ふたつの名宿の備忘録でした。